桂真也さん/オーボエ/クールシュベール夏期国際音楽アカデミー/フランス・クールシュベール

音楽留学体験者でなくては分からないような、音楽大学、音楽専門学校、音楽教室のコースプログラム、夏期講習会、現地の生活情報などを伺ってみます。将来の自分の参考として活用してください。


Image桂真也さんプロフィール
中学校のとき吹奏楽部でオーボエを始める。
和歌山大学教育学部に入学し、オーボエを専攻。大学院では音楽教育を専攻。2009年夏、クールシュベール夏期国際音楽アカデミーを受講。現在、和歌山大学大学院教育学研究科音楽教育専修在籍。

-最初に、桂さんのご経歴を教えてください。

桂  中学生のときに吹奏楽部でオーボエをやっていたことが始まりで、高校では部には入らず、個人的に先生について習っていました。大学は音大に行っても、音楽一筋では食べていけないだろうと思ったことと、それでもオーボエを続けられる学部を、ということで教育学部に進学し、音楽を専攻しています。ここで米山先生という方に師事して今に至っています。

-今回、オーボエを学びに海外へ行くきっかけは何だったのでしょうか?

桂  日頃から大学の先生に、西洋音楽は西洋のものだし、現地の雰囲気の中でやる音楽を、一度生で聴いたほうがいいと言われていたのが一つです。そして、今回担当されていたジャン=ルイ・カペツァリ先生が、米山先生のお知り合いということも、もう一つのきっかけです。カペツァリ先生が日本に来られたときに、米山先生が通訳をされたこともある、というご関係だそうです。

-では、師事されている先生のご紹介で、ということが大きかったのですね。

桂 そうですね。

-桂さんご自身も、もともとジャン=ルイ・カペツァリ先生にご興味があったのでしょうか?

桂  いえ、言われるまでは知らなかったですし、フランスのオーボエ自体、全然知らなかったんです。日本ではドイツ系に触れることが多いですから。ただ、もうひとつのきっかけとして、和歌山市の海外派遣制度っていうのがあって、その存在を知ったことも大きかったです。

-それは助成金が出る制度ですか?

桂  そうです。講習会費用や、現場での滞在費の半額を、市が負担してくれるという制度です。

-素晴らしい制度ですね! 志望された方全員が、受け入れてもらえるものなのですか?

桂  今年は、4人受験して3人が合格しました。音楽だけでなく、美術の方もいましたね。芸術分野に限られているんですけど。

-実際、クールシュベールに行くにあたって、不安はありましたか?

桂 やっぱり、フランス語が全然出来ないっていうのが一番でした。それと、海外に行くこと自体が初めてだったので、不安でした。

-実際にフランスに行ってみて、行く前に思い描いていた印象と、どう違いましたか?

桂  フランス人は、外国の人に対して冷たいとか、プライドが高いって聞いていたんですけど、そんなことはなかったです。空港でも、わからないことがあったとき親切に対応してくれたし、迎えに来てくれた方も、フレンドリーでした。

-英語は通じましたか?

桂  英語は普通に通じましたよ。でも、やっぱり話していると、いつの間にかフランス語になっていくってことも多かったですけど(笑)

-では、思っていたよりみんな親切だったんですね。

桂  はい。でも、最後に泊まったホテルは治安の良くない場所にあって、ちょっと怖い感じの人が多くてドキドキしましたけど。

-そうだったんですか。講習会についてお伺いしますが、全体の人数はどのくらいでしたか?

桂  全体の数は把握していないのですが、オーボエだけで25人でしたから、今年は非常に多かったようです。

-レッスンのペースは、どのような感じでしたか?

桂  先生がジャン=ルイ・カペツァリ先生とジェローム・ギシャール先生の二人だったんですが、前半、カペツァリ先生がいらっしゃらなかったので、ギシャール先生のレッスンが2日に一回くらい。その後は、二人の先生に一日おきに交代で指導してもらったので、毎日レッスンでした。

-二人の先生が、交代で毎日指導してくださるっていうことなんですね。それではけっこうお忙しかったのではないですか?

桂  そうですね。

-室内楽などには参加されましたか?

桂  参加してないです。

-レッスンで、先生方に見てもらった曲数は、どのくらいですか?

桂  3曲です。

- 一曲一曲を、しっかり細かく指導してもらうという感じですか?

桂  そうですね。伴奏も、あちらで用意してくださって。伴奏専門のピアニストの方とも合わせたりしました。

-二人の先生に指導していただけたということですが、お二人の指導法の違いはありましたか?

桂  お二人は非常に仲が良くて、それぞれ教える分野をわけていたようです。ギシャール先生からは、主に、曲の解釈の仕方やリード作りなどを、カペツァリ先生からは基礎的な呼吸法や力の抜き方などを教わりました。

-レッスンの雰囲気はいかがでしたか?

桂  基本的にグループレッスンで、笑いが絶えず、わきあいあいとしてました。僕以外はフランス語だったので、細かいことはわかりませんでしたが。

-どこの国の参加者が多かったのですか?

桂  フランス人ですね。先生の門下生が、そのまま来ているという形で。

Image-日本人は、桂さんだけでしたか?

桂  いえ、去年、クールシュベールに参加してから留学されている方がいて、二人でした。あと、台湾人が一人で、他は全部フランス人でした。

-基本はグループレッスンなんですね?

桂  そうですね、5人ごとのグループに分けられて、そのメンバーでレッスンを受けていました。

-練習は、皆さんどこの場所で、どのくらい練習していたのですか?

桂  ピアノの人達は、練習室を割り振られていて、決められた時間しか練習できなかったようですが、僕たち器楽チームに関しては、練習場で朝の8時から夜の8時まで、自由に練習ができました。なので、練習時間には困らなかったです。

-練習以外の時間は主に何をされてましたか?

桂  まずは練習でしたけど、それ以外は、リードを作り変えたりしていました。日本のリードが全く使えなかったので。あとは、洗濯とか...(笑) コインランドリーがすごく高かったので、部屋で手洗いしてました。

-街には遊びに行きましたか?

桂  けっこう行きました。でも、現地はスキー場なので、夏は閑散としていて、お店の営業時間が短かったんです。スーパーなんて、お昼前後と夕方少ししか開いてなかったりして。それは、ちょっと苦労しました。

-水とか、必要なものをそろえるのは大変だったんですね。

桂  水はホテルのカフェで買えました。でも、部屋の洗面所のお水も飲める水だったんです。冷たくておいしかったですよ。山があったりしてキレイな場所なので、水もおいしいんですね。

-治安は問題なかったですか?

桂  全然問題ありませんでした。リゾート地なので、バカンスを楽しむ人々ばかりで。

-一般の観光客も滞在しているのですが?

桂  はい、観光されてる方もいらっしゃいましたし、スポーツを楽しまれている方も多かったです。夏場だけでしょうけど、自転車のコースがあったりしました。

-では、のんびりと、リラックスした感じの所だったんですね。

桂  はい。天気もよくてとても過ごしやすい、とても良い所でした。日本みたいに、蚊とかの虫もいないし、静かで快適でしたよ。

-日中は暑かったですか?

桂  全然! とても涼しかったです。朝晩は冷え込んで、息が白くなるくらいでした。毎年、この講習会は、天気が荒れると言われているそうなんですが、今年は全然雨も降らずに、いいお天気が続いてラッキーでした。山の上のほうでは、雪が積もったと聴きましたけど。

-宿泊先のホテルはいかがでしたか

桂  ホテルは、すごく良かったです。パンフレットを見たら、4ツ星で、冬は一泊最低でも500ユーロもするような所だったようで、とてもキレイでした。料理はちょっと残念・・・なものもありましたが(笑)

-主にどういった料理が出ましたか?

桂  基本フレンチばかりで。メインがあってサラダがあって、という感じです。朝晩の食事が出て、昼は自分で買う形でした。

-日本食はないですよね。

桂  お米は何回か出たんですけど、お米じゃなかったです・・・パサパサしてて、「何だこれは!?」みたいな(笑)

-街には、外食できるような場所はありましたか?

桂  はい。カフェや、簡単なご飯が食べられる小さい店がありました。でも、カフェは割高なので、売店でサンドウィッチとかを買って食べてました。

-ホテルのお部屋は、講習中は相部屋ということですが、ルームメイトはどんな方でしたか?

桂  韓国人の方でした。高校のときからリヨンにピアノ留学していて、今もリヨンの大学に通っているそうです。コミュニケーションは英語だったんですけど、同い年だったので、すごく仲良くなりました。普段の生活がだいたい一緒で、フランス語で書かれている掲示物を、英語に訳して教えてくれたり、とても親切でした。彼の友だちの韓国人とも仲良くなりましたね。

-それは良かったですね! 何か、文化の違いで驚いたことはありましたか?

桂  ヨーロッパのほうでは、携帯がすごい発達してるな、と思いました。メールをあまり打たないからか、i-phoneとか、高性能のタッチパネルの携帯が流行ってました。あと、多くのフランスの人が、日本にすごく興味を持っていることに驚きました。「これは日本語で何ていうの?」とか「日本のどこどこに行ってみたい。」とか、よく言われました。

-では、外国の方ともお話しする機会が多かったのですね?

桂  はい、日本人と一緒にいることは、ほとんどなかったです。そのほうが面白いですし、せっかく行ったんだから、外国の人と話したかったし。

-フランスのお友だちともコミュニケーションは英語で?

桂  はい。すごくしゃべりにくそうでしたけど(笑)。お互いカタコトの英語で・・・。

-楽しそうですね。だいたい同年代の方たちでしたか?

桂  そうですね。だいたいは。

-フランスの方や同室の韓国人の方もですが、言葉が通じないなりの、コミュニケーションのコツみたいなものはありますか?

桂  まずは、挨拶をすることですね。むこうの人たちは、全然見知らぬ人でも、すれ違ったら「ボンジュール」とか、挨拶しますよね。日本では、そういうことってあまりないから、最初は意識してたんです。でも慣れてきてからは、自然に出来るようになりました。あと、話しかけられて、うまく答えられなくても、頑張って答えようとしていれば、それを汲んでくれました。だから、全然会話が成り立たなくても、最後は笑いで終わったりするので、積極的に、些細なことでも質問したり答えたりってことが、うまく付き合うコツかなって思いました。

-なるほど。 語学の重要性は、改めて感じましたか?

桂  それはもう(笑) 日本の英語って、「読み・書き」ですよね。でもやっぱり口に出してしゃべって、誰かに話しかけないと、語学って伸びないなって思いました。今回、たった2週間でしたけど、今まで勉強した以上に英語の力が伸びた気がします。

-素晴らしい! フランス語を話す機会はありましたか?

桂  もう、挨拶くらいでした・・・(笑)フランス語は全然ダメで・・・、英語に頼りっぱなしでした(笑)

-出発前はフランス語の準備はしましたか?

桂  挨拶程度は、本を買って勉強したんですけど、それくらいですかね・・・。

-講習会の最終日に行われたコンサートはいかがでしたか?

桂  コンサートは最終日とその前日の2日間、町のホールで、先生に選ばれた生徒が出演するコンサートがありませいた。僕は選ばれなかったんですけど、オーボエは4人選ばれました。

-実際聴いてみていかがでしたか?

桂  やっぱりみんな、本当にうまいなぁーーって思いました。すごく刺激になりましたね。

-滞在中になにか困ったこととか、ピンチの場面等はありましたか?

桂  クールシュベールでは全然なかったんですが・・・。行きの飛行機が遅れて、乗り継ぎの飛行機を次の便に変更する手続きが大変だったのと、フランスに到着して、お迎えの人がいなかったことですかね。あと、帰国するとき、空港まで電車を利用しようとしたのですが、駅のホームが複雑で、どこにその電車のホームがあるか分からなかったことです。

-それは大変でしたね。 行きの飛行機は、台風で遅れたんですよね?

桂  そうです。ちょうど関西に近づいてて、1時間半くらい。なんとか英語で乗り切りましたけど。。

-それは焦りますね。 帰国日の電車も無事に乗れましたか?

桂  はい。電車のホームのほうも、周りにいた方に聞いて教えてもらえたので、何とか無事に辿り着くことができました。

-今後留学される方に、「これは準備したほうがいい」というようなアドバイスはありますか?

桂  そうですね。ある程度は、現地の天気や習慣のことを知っておいたほうがいいと思います。あと、ピアノの人は、練習時間がとにかくないから、曲をしっかり練習しておくこと。木管楽器に関しては、クールシュベールに限ってかもしれませんが、リードが全く使えないので、リードを作るセットは一式もって行ったほうがいいと思います。

-生活面で、「これは持っていくと便利」というグッズはありますか?

桂  洗濯用の、洗濯バサミがたくさんついた小さな物干し。実際、持っていったんですけど便利でしたよ。

-今回、このクールシュベールの講習会に参加されて色々な出来事があったと思いますが、参加して一番良かったこと思うことは何ですか?

桂  そうれはもう、やはり、生でフランスの演奏が聴けたことですね!レッスン中にも、先生が吹いてくれたりすることもあって、それだけで感動してしまって。先生方のミニコンサートでも、演奏が終わるたびに大きな拍手があがるくらい、すばらしい演奏でした。先生方のミニコンサートは4回あったのですが、そのうち1回、クラリネット演奏集団Les Bons Becsが来たんです。日本では、あまり知られてないんですけど、フランスではすごく人気があって。クラリネットを使って、面白いパフォーマンスを見せてくれたんですけど、本当に楽しかったですね。

-日本と海外での音楽の教え方の違いのようなものは感じましたか?

桂  むこうの人は、すごく褒めてくれるんですよね。出来た瞬間、絶妙なタイミングで褒めてくれるので、それが気持ちよかったです。あと、とにかく、「色を考えろ」と言われました。曲の色合いを考えてその音を出さないと、と。いくら曲の解釈ができていても、音色がしっかりしていないと台無しだと言われましたね。

-色を考えて吹く、ですか。

桂  はい。最初は、いまいち分からなかったんです。でも先生の演奏を聴いていたら、一本のオーボエなのに、いろんな音色が聴えるんですよ。「これがフランスのオーボエか!」って感動しました。

-確かにフランスの音楽は色彩的でキラキラしているイメージですよね。

桂  はい。本当に。あと、リードの作り方も全然違うんですよ。その作り方も参考になるな、と。

-今回のご留学で、フランスの音楽を身近に体感して、自分自身、成長したなって思うことはありますか?

桂  曲にあった音作りと言うのでしょうか、そのために、呼吸法を改善したりできました。

Image-それでは最後になりますが、今回の留学を経て、今後の音楽活動において何か新しい目標は出来ましたか?

桂  今、大学での僕の研究テーマは、「音楽のアウトリーチ」なんです。これは、学校や老人ホームなどの施設に出向いていって、普段、生の音楽を聴けない方に音楽を提供するというものなんですけど、今回の留学経験は、これに生かせると考えています。留学で得たことを表現できるように頑張りたいです。

-また留学してみたい、という思いはありますか?

桂  はい、行く前は全然考えてなかったんですけど、機会があればフランスに留学してみたいなって思いました。パリのコンセルヴァトワールなんて、学費が年間400ユーロくらいって聞いたので。

-ヨーロッパは本当に学費が安いですから。日本の大学と比べたら…驚きますよね。

桂  ですよねー!安くいけるって聞いたので、チャンスがあればぜひ行ってみたいです。

-将来の夢は? 音楽家になりたいとかありますか?

桂  いえ、小学校の教員を目指してます。中学校は教科担当ということで、音楽に接する時間はあるのですが、小学校のほうが子どもと触れ合う時間が多いですから。子どもたちとの距離も縮まると思うので、小学校の教員になりたいな、と。

-そうですか!桂さんならきっと優しい先生になると思います。クールシュベールの経験を生かして、これからも、勉強と音楽を続けて頑張ってください。

桂  はい、ありがとうございます。

-本日は、お忙しいところ、本当にありがとうございました。

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