本池美紀子さん/ピアノ/マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク校/ドイツ・ハレ
本池美紀子さん プロフィール4歳よりピアノを始め、6歳より作曲を学ぶ。神奈川県立弥栄高等学校芸術科音楽専攻を経て東京音楽大学を卒業。現在ドイツのMartin-Luther-Universitätの大学院に在学し、ピアノとピアノ教育を学ぶ。日墺文化協会フレッシュコンクール2012奨励賞、第32回日本ピアノ教育連盟ピアノオーディション奨励賞を受賞。2010年にVladimirOvchinnikov氏の公開レッスンを受講。2015年にEuro music festivalにてIliya Scheps、JochenKöhlerの各氏のレッスンを受講し、コンサートに出演。2016年東京音楽大学ピアノ卒業演奏会に出演。
-簡単な自己紹介とということで、ご経歴を教えていただいてよろしいでしょうか。
本池様:2歳からヤマハ音楽教室に入って、4歳からピアノ始めました。6歳から14歳まで作曲をヤマハで勉強して、クラシックのピアノの勉強をしました。高校は県立なんですけど音楽科に入って、そのあと東京音楽大学を卒業して、今ハレのマルティン・ルター大学のピアノ教育科にいます。
-今回留学を考え始めたきっかけは、何かありましたか。
本池様:小さい頃から何となく将来留学したいなという気持ちはあったんですが、はっきり決めたのは去年の夏で、そのときもアンドビジョンさんにお世話になったんですが、ハレの夏期講習に参加して、そのときに初めて1人でドイツに行って、2週間ぐらい過ごしたんですが、日本よりも私にとっては居心地が良くて、本当に周りのことが何も分からないのに、来たその日から心が開けて、その瞬間に私がいる場所はここだなと思いました。絶対ここで勉強したいと思ったのと、ご縁があっていい先生に巡り会えて、その先生のもとで勉強したいなという気持ちが強くて、それで留学を決めました。
-最初に夏に行ったきっかけというのは、前々から思われていたんですか。
本池様:そうですね。1回進路を迷った時期があって、このまま日本で就職をしてピアノの先生になるのか、大学院に行くのか、それとも留学をするのかと迷った時期があって、思い切って一度行ってみようということで、家族とも相談して行かせてもらうことになりました。
-今の学校を選ばれるまでにうちのカウンセラーとお話をしていただいたり、紆余曲折があったと思うんですけど、学校選びのときの経緯はどうでしたか。
本池様:去年の夏にハレで夏期講習があったので、そのときに初めてハレに来たんですが、最初は今と違う先生を指名していたんです。でもそこで通訳して下さった方がその学校の生徒さんで、その方の先生も講習会に参加されていて、通訳の方が「先生が時間があるからよかったら先生にも習ってみない?」と声をかけてくださって、それで今の先生と出会いました。その先生は本当に素晴らしくて、この先生のもとで勉強したいなと思いました。そこから帰国して、すぐに準備をスタートしました。
-実際日本で学ばれていたご経験もあったと思うんですけども、日本と違うところを感じられたことはありますか。
本池様:レッスンの中では先生と対等に話せるという印象が一番強くて、何でも聞けるし、「私はこう思うんですけど、先生はどう思うんですか」という聞き方も普通にできたり、本当に親身になってくださるので、安心して音楽が勉強できる環境だと思います。
-それは日本ではあまり感じられなかったことですよね。
本池様:先生にもよると思うんですが、私の日本での先生はすごく親身になってくれましたし、すごく成長できたんですけど、それがあったからこそ今こっちでも充実できていると思いますし、先生といろんな話ができるのも、日本でいろいろ教えてもらって培ったものがあるからこそだと思っていますが、日本よりも本当に対等な感じがします。先生と生徒というよりも、音楽家同士で話せる感じがしますね。もちろんたくさん教えてもらうこともあるんですが、いろんな話をしてくれます。
-出願のお話もお聞きできたらと思うんですが、試験の内容や手段の書類はどういうものが必要でしたか。
本池様:書類は今までの経歴、日本で言う履歴書みたいなものをドイツ語で書くんですが、それと日本の大学の成績証明書と卒業証明書、高校の成績証明書と卒業証明書、曲目と申し込み用紙、語学の証明書でした。
-これは辛かったという書類はありましたか。
本池様:私はアンドビジョンさんに助けていただいたので比較的スムーズにいけたんですけど、きっと1人だったら大変だったろうなというのは履歴書です。あとは要項を読むのも大変だったと思います。
-その履歴書というのは、普通に日本人がイメージする文房具屋さんに売っているようなものだと思うんですけど、大学の履歴書というのはまた違うものになるんですかね。
本池様:そうですね。少し違って、写真はあってもなくてもいいんですけど、今まで習った先生の名前を書いたり、コンクールで獲った賞だったり、自分が持っているグレード等を書きました。
-実際の試験はどんなものでしたか。
-曲目は自分で好きに選べるということですか。
本池様:大学によって違うんですけど、私の大学ではバッハの平均律など、ある程度作曲家や時代が決まっていて、そこから自分で考えて選ぶというかたちで、割と自由に選べました。私は全部で7曲用意して、他の大学院も2つ受けたんですが、そちらは本当に自由で、45分のプログラムを考えていくものだったので、そこと同じプログラムが使えたのですごくよかったです。たくさん弾くことで勉強になりました。
-なかなかそこまでの曲数を短時間で仕上げていくというのは、リサイタルでもしない限りないですよね。
本池様:そうですね。試験の雰囲気もすごく和やかで「ようこそ」と言ってもらって、「最初は何を弾きたい?」と聞かれて、それで始める感じでした。全然ピリピリしていなくて、日本の音大の受験は本当にピリピリなんですけど、そこもすごく驚いて、いいなと思いました。
-簡単な面接というのはどういう面接だったんですか。
本池様:「なんでここの学校に行きたいの?」と聞かれたり、「日本でどれぐらいドイツ語を勉強したの?」とか「何を勉強したくてこの学校選んだの?」と聞かれました。難しいことはあまり聞かれず、先生と世間話をしているような雰囲気でした。
-ではほとんど実技の部分を見られて、という感じですかね。
本池様:そうですね。
-合格して最初の登校のときに色んな手続きがあると思うんですけど、難しいところはありましたか。
本池様:大学が始まるのが10月10日だったんですが、10月の初めにあるオリエンテーシまでに手続きをして下さいとのことだったので、9月に必要な書類も全部教えていただいた状態で行ったんですが、3時間ぐらい待ちました。生徒さんが多すぎてみんな並んでいましたね。手続き自体は思ったより難しくなかったですが、待ち時間が結構辛かったです。
-オンラインではなくて、窓口に行かないといけないですもんね。
本池様:そうですね。窓口で番号が書いた券をもらって、ひたすら待つという感じでした。実際の手続き自体は合格証を見せて、生徒証になる写真を渡して、後日入学許可証と生徒証が郵送されてきました。
-同時に諦める理由がお金になるというのも、留学の難しいところだと感じているんですが、本池さんの、今回の留学の資金というのはどういうふうにご準備されましたか。
本池様:留学資金は両親が払ってくれていて、最初の2年は学費や生活費も両親が負担してくれるという約束で、2年後からは自分で頑張ろうと思っています。
-なかなかそういったかたちで行かれる方は少ないんですが、2年後からはどうやって行かれるご予定ですか。
本池様:この2年で語学力をつけて、ピアノを教えてお金を稼いでいきたいと思います。教えるのはいい経験になりますし、それで生活できるなら一番いいなと思っています。
-それでもし成功すれば、そのままいられるかもしれませんもんね。
-語学の勉強というのは、もともとハレのときは、ドイツ語は普通に分かるという感じだったんですか。
本池様:まだ日常生活程度なので、去年の6月から語学学校に日本で通い初めて、その2カ月後に夏期講習に行ったんですが、そのときはまだレッスンも通訳が必要で、初歩の語学力だったんですけど、日本に戻ってきてから一生懸命勉強して、今もまだ授業は結構大変なんですけど、前よりは話せるようになってきました。
-今はちなみに、提出された語学の証明で言うと、グレードはどれぐらいに当たるんですかね。
本池様:今はB1です。
-1年でそこまでいかれたというのはすごいですね。もともと語学を勉強されるのは好きなんですか。
本池様:そうですね。特別何かをやってきたわけではないんですが、語学を勉強するのは好きです。
-今もそちらで語学学校に通うわれているんですか。
本池様:今のセメスターは通っていないんですが、次のセメスターから大学の語学講座に通いたいなと思っています。日本人が本当に少ないので、毎日お昼ご飯とかカフェに友達と行くとドイツ語話せる環境なんです。それは私にとってすごく良くて、授業も苦労しているんですが、録音を録って家に帰ってからもう一回聞くという生活をしているので、それも語学力アップにいいなと思っています。
-では毎日ドイツ語のシャワーを浴びまくっているような感じですよね。ちなみに日本人はどれくらいいらっしゃいますか。
本池様:私の知ってる人は音楽科に去年通訳をしてくださった方が1人いて、あとは違うことを勉強している人だったり、働いている人がいますが・・・街全体で30人くらいですかね。中国人や韓国人はたくさんいるんですが、日本人は本当に少ないです。
-実際学校の雰囲気というのはどんな雰囲気ですか。
本池様:学校の雰囲気もすごく良くて、みんな一生懸命勉強していますが、だからといってライバル視するのではなく、意見を出しあったり、レッスンや発表会ではなくても、普段からみんなで弾き合いっこをして意見を出しあったりしています。お昼を食べながら面白い話をして笑っていると思いきや、政治の話が始まったりするので、みんな本気で勉強しているんだなということを感じますし、本当にみんなが音楽が好きでやっているんだなということを毎日感じています。
-年齢層は同じ位の方が集まっているんですか。
本池様:私が今22歳なんですが、35歳位の人もいたりします。私は今大学でマスターをしているんですが、マスターの人からすると私なんて本当に小さい子が入ってきたという感じで、30歳前後の人が多いですね。バチェラーだと私の年齢位の人が多いんですが、日本だったら22歳は就職しているか大学院かという感じなんですが、こっちだったら「なんでまだ22歳なのにマスターをやるの?」と聞かれたりしますね。日本人だから余計に若く見られて、18歳位だと言われました。面白いエピソードがあるんですけど、受験のときに飛行機に乗って違う街に受験しに行ったんです。そのとき隣に座ったメキシコ人のおばあさんと仲良くなって、「明日受験があるんです」という話をしたら、「高校の?」と言われました。「大学院のです」と言ったら天才児だと思われて、「YouTubeの曲をアップして。私絶対聴きたい」と言われてしまいました。7歳も若く見られるとは思わなかったです。
-日本人が若く見られる傾向があるというのは聞いたことがあったんですけど、7歳も若く見られるというのは珍しいですね。学校の人数はどれくらいなんですか。
本池様:音楽教育科の人数は、大学院だけだと20人ぐらいですかね。音楽教育と音楽学という括りがあって、音楽学も合わせると40人ぐらいいると思います。学校全体では、音楽科だけではなく哲学科やドイツ文学とか、街のいたるところにキャンパスがあるので、全体だと1000人ぐらいになると思います。
-総合大学の中の、いわゆるピアノ教育学専攻みたいな所属でいらっしゃるということですね。改めて日本と留学先とで大きく違うところはズバリどういうところですか。
本池様:結構たくさんあるんですが、最初びっくりしたことが、皆さん本当に親切で、私が来たばかりで分からないことだらけだったときに、全然知らない人にもいろんなことを聞いていたんですけど、みんなが親身になって教えてくださいました。トラムで行き先を間違えたときがあって、そのときも後ろの人にこそこそと聞いたら、その号車の全員が心配してくれました。「次の駅で降りて」と言われて、一緒に降りてくれたおばさんが、全部私の最寄りの電車駅に止まる電車の番号をメモしてくれたりもしました。それが本当にうれしくて元気が出ましたね。毎日いろんなところに買い物に行くんですが、必ず挨拶をして入ることが日本ではないなと思いました。それをこちらでは当たり前にやっています。買い物が終わって出て行くときも、「良い1日を過ごしてね」みたいに声を掛け合うので、そういう文化が日本ではないので、いいなと思いました。私は住んでいるところが神奈川で、大学も東京の池袋だったので、本当に全然違うなと思います。私には都会よりも、今いる所のようなみんな家族のような雰囲気がすごく好きなので、居心地がいいです。
-普段の生活をしていて、逆に困ったことはありましたか。
本池様:買い物は何でも揃いますし、周りの方々に助けていただいているおかげで特段困ることはないです。私は身長が160センチが日本ではそんなに低くないと思うんですが、でもこちらでは本当に小さいほうで、身長が足りなくて困ったことがありました。家の電球を付け替えるときに、大家さんが「はしごを使っていいからね」と言ってくれたんですけど、はしごを使っても届きませんでした。
-家の天井が高いということですか。
本池様:そうですね。全部がビックサイズで、何をするにも身長で困っているかもしれません(笑)
-そういうときでもハレの人が助けてくださるということですよね。
本池様:はい。大学にいる背の高い友達に「ちょっと来て」と言って助けてもらっています。実際周りも助けてあげなきゃと思ってくれて、助けてくれている部分もあると思いますね。文化が違うので戸惑うこともあるんですが、その度に先生だったり友達だったり、街の人が本当に親身になって「何を困っているの?」と声をかけてくださったりします。入学手続きのときも、授業の登録だったり分からないことがあったときに、知り合ったばかりなのに、みんなに聞いたら親切にやり方を教えてくれるので、本当にありがたいです。
-羨ましい環境ですね。音楽のレッスンの話も聞きたいなと思っているんですが、学校の授業というのはどんな内容になるんですか。
本池様:自分が先生からレッスンを受けるというものと、ピアノ教育学科なので、自分が生徒にレッスンをするというものもあります。2人生徒を持って、週に1回ずつレッスンをするという授業があります。あとはグループの授業で、1人が生徒を連れてきて、皆の前でレッスンをして、そのあとにみんなでディスカッションをする授業があったり、先生の話を聞くだけのピアノのメソッドの授業や音楽学の授業があったりします。
-自分が生徒を持つというのは、どこから生徒さんを連れてくるんですか。
本池様:友達だったり、他の学科でピアノに興味のある友達を見つけたり、知り合いの知り合いを紹介してもらったりしています。あとは先生が普段から募集しているので、そこから紹介してもらったりします。
-生徒さんを自分で持ってやるという授業は、単位認定をされる授業なんですよね。
本池様:そうです。学期の終わりに試験もあって、先生の前でレッスンをするというかたちです。
-それは普段、先生は横で見ていたりするんですか。
本池様:いえ、見ていません。完全に独立していて最後に見せるという感じです。時々ディスカッションをする授業のときに生徒を連れて行くので、そのときは先生がいるので、なんとなくどういう状況かというのは、先生は分かると思うんですが、結局はセメスターの終わりに試験があって、そこで先生がどう成長したかを見るんだと思います。
-全然言うことを聞かない生徒さんに当たってしまう可能性もあると思うんですが。
本池様:そうですね。でもそれも私たちにとってはいい経験で、私も日本で小さい子を教えていた時期があったんですが、本当に小さい子は長時間だと集中力が持たないので、いかに興味を引きつけるかとか、いかにつまらない思いをさせないで面白いレッスンをするかを考えたので、それをできるのはすごくいい経験だと思います。そういう授業があると、最初カリキュラムを見たときに私もびっくりしました。
-そのグループディスカッション、はどれぐらいの頻度でされているんですか。
-自分自身も指導を受けつつ、それ以上に教えるということをちゃんと経験させてもらえるという中身になっているんですね。これは非常に珍しいご経験だと思うんですけども、海外で勉強したいという方が本当に多くて、あえて日本で準備しておくべきことというのは、何かありますか。
本池様:音楽用語ですね。楽典で使う用語を、できるだけドイツ語で何というのか覚えておいたほうが、レッスンを始めたときに楽だと思います。
-レッスンはドイツ語でされていらっしゃいますもんね。すぐに出てこないときは英語で補足するという感じですか。
本池様:英語で補足したり、いつも私は本と一緒に用語の表を持っているので、カンニングをしています。私の生徒には学生が1人いるので、その人にドイツ語教えてもらったりしています。
-普通のピアノ科の方とは時間の使い方が大きく違うように感じたんですけど、日頃のご自身のピアノの練習や指導の準備は、どういうふうにされていらっしゃるんですか。
本池様:私は演奏の面でも他の音大生と同じように勉強をしたいと思っているので、時間の使い方に苦労しています。基本的に朝授業の前に、練習をするために大学に行って、授業を受けて、家に帰ってから自分がレッスンをする指導案を考えたりするんですけど、ほとんど授業以外は練習をしていますね。たくさんいろんな曲を勉強できていて、コンチェルトの伴奏だったり歌の伴奏だったり、アンサンブルの曲も勉強できているので、すごく楽しいんですけど、その分時間の使い方が大変です。
-ちゃんと睡眠はとっていますか。
本池様:睡眠と食事は手を抜けないと思っているので、そこは大丈夫です。いっぱいいっぱいになっていたときもあったんですが、そのときも友達に相談したら「タイムテーブルを作るといいよ」と教えてもらって、決められた時間の中で集中してやることを教えてもらいました。
-すごいですね。
本池様:最終的には指導者になりたいと思っているんですけど、ピアニストにもなりたいと考えていて、それで今習っている教授が、普段の授業も担当しているし実技のレッスンも担当している先生なので、その先生のもとで学べばどっちも深く学べると思っています。
-先ほどタイムテーブルというお話があったと思うんですが、1日のスケジュールはどういう感じで進めていらっしゃいますか。
本池様:8時ぐらいに大学に行って、授業も毎日時間がバラバラなんですが、授業まで練習をして、授業やピアノのレッスンを受けて、夕方もまた練習して、夜にコンサートがある日が多いんですけど、コンサートがない日は、夜も少し練習してから家に帰って指導案を作るという生活をしています。
-コンサートは結構街で盛んにされているんですか。
本池様:はい。毎日のようにされていて、それもすごく私にとってはいいことなんですけど、生徒たちが大学で、コンサートだったり試験をしているので、それを聴いたり、教会でミサをしていたりするので、週に2回は何かしらのコンサートに行っています。オペラもすごく安くて、学生は800円位で聴くことができます。
-日本で聴いたら1万円位しますよね。それだけでも元が取れそうですね。普段自分の練習をされたり指導案を書いたり、かなり濃密に過ごされていると思うんですけど、現地のミュージシャンや音楽家の方とのつながりが生まれたりというのはありますか。
本池様:ありますね。コンチェルトイグザムという大学院を卒業した人が受けられるカリキュラムがありまして、それは2年間受けて、そのあと卒業試験に受かると演奏家としての国家資格がもらえるんですね。そういう生徒さんも私のついている教授のもとにいらっしゃって、その方は演奏活動をたくさんされているので普段からそういう方と話せたり、その人の演奏に行ったりすると、やっぱり輪が広がりますね。
-その国家資格を持っていらっしゃる方は少ないんですか。
本池様:そうですね。少ないと思います。本当に先生とのご縁に恵まれたと思います。私も可能であれば、今の大学院を卒業したあとにコンチェルトイグザムに進みたいなと思っています。そこを目指して勉強したいなと思っています。
-他の生徒さんのお話ですが、真面目な方が多いと伺ったんですが、日本と比べてこういうところが特徴的だというのはありますか。
本池様:普段から音楽の話を話せるというのが日本と違うなと思ったのと、みんなもちろん真面目なんですが、思いっきり騒ぐときは騒いでパーティーをしたりとか、お散歩に一緒に行ったりとか、オンとオフのメリハリがはっきりしていますね。昨日も私と同じ曲を弾いている生徒がたまたまいて、その生徒のレッスンについて行って聴講していたら、「先生が美紀子も弾いて」と言ってくれて、お互いの演奏を聴きあってレッスンしたりということもありました。すごくみんなオープンですね。
-今のお住まいは学生寮になるんですかね。
本池様:いえ、私は普通のアパートに住んでいます。大家さんも同じ建物に住んでいて、その内の1部屋を借りているという感じです。もちろん学生寮もたくさんあるんですが、学生寮はルームシェアというかたちなので、それになじみがないので1人の方が落ち着くかなと思って、今のところに住まわせてもらっているんですけど、2年後に自分で払うことになったら払えないので、学生寮に引っ越そうかなと思っています。
-ちなみに1カ月の生活費はどれぐらいなんですか。
本池様:生活費は食費や家賃などを合わせると10万円ぐらいですかね。今は買い物に行く時間もないのですが、今後時間ができてくるようになると危ないですね。
-清水からの質問ですが、滞在許可に必要だったものは覚えていますか。
本池様:パスポート申請用紙と6カ月以内に撮影した証明写真、大学の入学許可証、親からの経費負担誓約書、ドイツに来てから申し込んだドイツの健康保険の契約書と住民票、そしておうちが決まったときに大家さんからもらった契約書でした。
-すごくたくさんありますね。これはスムーズにいきましたか。
本池様:書類自体はスムーズに集まったんですけど、自分で外国人課にアポを取らないといけなくて、申請をするために日時の予約が必要だったので予約の電話をしたんですけど、「今年いっぱいは空いている時間がない」と言われてしまいました。結局「学生のために設けている日時に来てください」と言われたんですが、それだとシェンゲンが過ぎてしまうと思ったので、もう一度外国人課にメールを送ったところ、「今日の午後に来られない?」と言ってもらえて、特別に申請させてもらえることができました。そのときも清水さんにどうすればいいか相談して教えてもらいました。
-住民登録というのはどんな感じでしたか。スムーズでしたか。
本池様:それも市役所にアポを取らないといけなかったのでアポをとって、大家さんと契約したときにもらった契約書とパスポートが必要でした。
-その賃貸の証明をもらうのに必要なものは何でしたか。
本池様:大家さんによって違うと思うんですが、私の場合はすごくフランクな大家さんだったので信頼してくださって、何もいらなかったです。本来であれば、親からの経費負担証明書とパスポートが必要なところが多いそうです。
-本当に大きなトラブルもなく、充実していらっしゃるということだったので、とてもうれしく思っています。また次の夏にアンドビジョンから行かれる方もいらっしゃると思うんですが、タイミングがあれば、そのときのお話などもしていただければうれしいです。今後はどういった進路を考えていらっしゃいますか。
本池様:今後は、今の大学院を出たあとに、可能であればコンチェルトエグザムに進んで、ドイツでピアニストとしての国家資格をもらうというのが1つの目標で、もう1つは平行して、指導者として、2年後ぐらいに本格的にやっていけたらなと思っています。今はまだこちらに残るのか日本に戻るのか考え中なんですけど、日本に帰るとしたら、こちらで学んだピアノ教育、ピアノメソッドを生かして、日本で日本と違ったピアノ教育法を自分もやるし、広めていけたらなと思っています。私自身もまだ先のことは分かっていないんですけど、今はとりあえず勉強して力をつけようと思っています。
-ありがとうございます。では最後の質問です。これからドイツに留学を考えていらっしゃる方に、アドバイスをぜひお願いします。
本池様:ご両親との相談だったりお金の面であったり、いろいろ考えないといけないこともあると思うんですが、もし可能であるなら、ぜひ本場で学んだほうがいいなというのが私の意見で、本場でしか味わえない空気だったり、本場の方との関わりなどがあって、普段の生活からもたくさんインスピレーションが受けられるし、音楽面でも日本と全然違うレッスンが受けられたり、違った仲間ができたり、毎日が音楽漬けの毎日ですごく幸せなので、そういうものを味わえるのはすごく幸せだと思います。来るときに気をつけたほうがいいなと思うのが、自分が何を勉強したいのか、どういう演奏ができるようになりたいのか、ということを明確にして来ないと、なんとなく生活して終わってしまうので、そこは気をつけたほうがいいかなと私自身も思っています。
-貴重なお話を聞かせて頂き、本日はありがとうございました。
本池様:こちらこそありがとうございました。