松村優吾さん/指揮/ミラノヴェルディ音楽院/イタリア・ミラノ
松村 松村優吾といいます。小さい頃からピアノを始めて、桐朋女子高等学校音楽科の作曲科に入学しました。その後卒業してそのまま大学に行き、指揮科に転向して、大学を卒業した後に、ミラノの方に。現在ヴェルディ音楽院に在学中です。
-最初は作曲をなさっていたのですか?
松村 そうです。
-指揮に移ったきっかけは?
松村 元からやりたかったのですが、高校の時点で指揮科がないのでやむなくというか……。
-作曲と指揮はつながりが強い感じですか?
松村 そうですね。いろいろと楽器のことを知れるので。
-ヴェルディ音楽院に留学したきっかけは何ですか?
松村 オペラを勉強してみようかなと思ったのがひとつと、単純にむこうにいる際に学生になっておくと滞在許可もとりやすかったりするので、そういう点が大きかったです。
-やはりオペラの本場、というイメ-ジがあるイタリアでやりたいと思われたのでしょうか?
松村 行く前は全然オペラのことを知らなかったので、とりあえずどういうものなのかを現地に行って感じてみようかなというのが大きかったです。将来的にどうなるかはわからないのですが、できることならば、という風に思います。
-学校に行かれて今、1年半くらいですよね? 学校生活はいかがですか?
松村 日本の大学とは違う雰囲気というか、あんまり学校という感じがしなくて、レッスンもわりとゆるくやっているので(笑)、それはそれで面白いかなと思っています。
-具体的にはどんな感じで違うのですか?
松村 国民性もあるのでしょうけれど、あまり時間どおりに始まらなかったりとか(笑)。
-なるほど(笑)。レッスンはグル-プレッスンですか?
松村 そうです。
-ではみんなが集まるまでに時間がかかって?
松村 いえ、来た人からやる感じです。
-今、指揮のクラスは何人くらいいるのですか?
松村 2クラスあるのですが、僕のクラスは10人弱ですね。
-みんな同じ学年で?
松村 いえ、ばらばらです。大学と大学院のコ-スがあって、みんな一緒にレッスンを受けているので。
-教わる内容も一緒なのですか?
松村 いえ、やっぱりそれぞれ違います。
-指揮の授業は、実際にオケをふったりなさいますか?
松村 オケは月に1~2回プロオケをふれるのですが、それ以外は先生と1対1ですね。
-ヴェルディ音楽院ならではの特徴などはありますか?
松村 ならではというわけではないのですが、ミラノに住んでいるのでスカラ座が本当にすぐそばにあって、シ-ズンになると頻繁に演奏会が行われています。そこにそんなに高くない値段で行けるのは魅力かなと思いますね。
-だいたいいくらくらいですか?
松村 今ちょっと上がって、日本円で1500円弱ですね。
-10何ユ-ロくらいですか?
松村 そうですね。それでも他のヨ-ロッパの国の、ドイツとかオ-ストリアに比べると高いみたいなんですが。
-確かにそうかもしれないですね。でもスカラ座に入れるのは楽しい感じですね。
松村 そうですね。
-学校に日本人はどれくらいいますか?
松村 そんなにいないと思います。知っている限り10人もいないです。
-指揮科は松村さんだけですか?
松村 そうです。
-歌とかは?
松村 女性はいるのですが、男性はいないですね。
-実際現地に滞在していて、日本とイタリアで全然違うなと思うことはありますか?
松村 けっこうあるのですが、例えば公共交通機関がちゃんとしているかしていないかとか(笑)。あとはいい所で言えば日本人よりオ-プンというか明るいので、一回仲良くなったらずっと仲良くしてくれますね。
-言葉はどうですか? 最初に行かれた時は大変でしたか?
松村 最初はもう、全然わからなかったです。
-ちゃんと試験も通ったけれど、それでも大変なのですね?
松村 会話と筆記は別だと思うので。その辺が、、、。
-あちらの人はすごいしゃべりますものね。
松村 そうですね、早いです。
-今はもうわかりますか?
松村 日常生活の会話は大丈夫なのですが、イタリア人グル-プの若者の中に入って話すのはしんどいですね。
-スラングとか?
松村 それもそうなのですが、早口でしゃべるので、テンポ感についていけないというか。
-学校の授業は、基本は課題を与えられてそれをやっていく感じですか?
松村 そうですね。
-日本でこれを勉強しておいてよかったという授業はありますか?
松村 学校によってかもしれないのですが、僕が今通っている学校は日本でとった単位を持ち込めるので、免除になる科目がいくつかあって、それはよかったなと思います。
-免除の手続きはどんな感じで?
松村 自分の母校にお願いしたらやってくれると思うのですが、英語のものを出してくれて、それをそのまま提出して、教授会みたいな所で「これは免除で」となったようです。
-「音楽史はなし」とか、そんな感じですか?
松村 そうですね。
-今学校での授業はどれくらいの頻度であるのですか?
松村 週2~3ですね。
-行っている時は朝から晩まで?
松村 いえ、そんなことはないですね。2~3時間とか。
-わりと自由な時間もあるのですね。そういう時は何をなさっているのですか?
松村 演奏会に行ったり、散歩に出かけたりとか、旅行にも行きました。
-旅行はどちらへ?
松村 イタリアはベネチアとかフィレンツェとかロ-マとかですね。
-街によって雰囲気も違いますよね?
松村 そうですね。
-今まで学校の先生はどうやって探されましたか?
松村 漠然とイタリアに行こうとして、アンドビジョンさんに調べていただいて。何件かイタリアの学校の先生を紹介していただいて、それでお試しという感じで行ってみて、と。
-結局聴講した先生につかれたのですよね?
松村 はい、その方が大学院の先生なので。
-先生はどんな方ですか?
松村 あまりイタリア人ぽくないというか、真面目な人ですね。
-お写真でも生真面目そうな感じですよね。家にはピアノはあるのですか?
松村 あります。
-では練習は家で?
松村 はい。
-ピアノはレンタルで?
松村 そうです。
-月々いくらくらいですか?
松村 月50くらいですね。
-一日のスケジュ-ルを教えてください。
松村 毎日バラバラなのですが…。レッスンがある時は、朝8~9時に起きて、すぐ下にバ-ルがあるので、そこで軽くコ-ヒ-を飲んだりして。暖かい時なら午前中少し外に出て、楽譜を持っていって読んだりして、家に帰って昼ご飯を食べ、2時からレッスンに行って6時くらいに終わります。ご飯をつくって8時くらいに食べて、9時からピアノを弾くような感じです。
-そんなに遅い時間にピアノを弾いても大丈夫なのですか?
松村 22時まで弾けるので。
-料理もなさっているのですね。
松村 むこうに行ってやるようになりました。
-イタリアンですか?
松村 いえ、日本食が好きなので。パスタは作りますけど、極力食べたくないのでお米を食べています。
-お米はミラノで買って? 日本米ですか?
松村 ロ-マ米というのが、わりと日本米に近いので…。
-学校に入る前では、出願や試験でどんな苦労がありましたか?
松村 過去の問題を解いていた時は語学試験が大変だなと思っていましたが、それくらいですかね。手続き自体はアンドビジョンさんにやっていただいたことが多かったので。大使館に行ったりはありましたけど。あとは実技の勉強をしたくらいです。
-実技試験はイタリア語ですか?
松村 その時は英語でした。
-試験はどんなことをしたのですか?
松村 オ-ケストラを5分弱くらいふりました。
-他の受験者の演奏も見るのですか?
松村 いえ、見れません。
-学費ですが、今はどんな感じですか?
松村 指揮科の場合、本来なら1300~1400ユ-ロくらい払うのですが、少し安くなる機関があります。そこに今収入がないという申請をして、親元を離れているという証明書を出すと、「この人はこういう事情なので安くしてください」という書類を出してくれるので、それを学校に持っていきます。それを踏まえて、今払っているのは400~500ですね。
-それは1学期で?
松村 1年です。
-年収ごとの表に基づいているのですね。
松村 そうです。
-学校にいる人はそれぞれ学費が違っていると。
松村 科によって違うみたいですね。
-指揮科には日本以外の留学生はいますか?
松村 一人アルゼンチンとのハ-フがいて、ドイツ人が一人いて、それくらいですね。
-基本はイタリア人に囲まれてと。
松村 そうですね(笑)
-イタリア人の友達も増えましたか?
松村 学校の友達はけっこう増えました。
-学校の休みは多いのですか?
松村 あまり学校というイメ-ジが僕にはないかな……レッスンという感じです。
-今はレッスンを休んで日本に来ているのですか?
松村 はい。
-それは休学届けを出すのですか?
松村 いえ、先生に言って。学費を1年分払っているので。
-先生の了解がとれていれば休んでも問題ないと。
松村 問題ないはずです(笑)。
-現地でコンク-ルにも出たと思いますが、それは先生が出なさいと言うのですか?
松村 そうですね。
-指揮科の人みんなに、「出たい人はいる?」と聞くのですか? それとも松村さんだけに?
松村 みんなに言います。
-今までどれくらい出ましたか?
松村 一個だけですね、まだ。
-紙でできた教会?
松村 あぁ、オルガ。日本人がつくった。
-イタリアで色々な経験を積まれていると思いますが、講習会も行かれたのですか?
松村 今年キジア-ナに行ってきました。
-どうでしたか?
松村 すごくおもしろかったです。
-レベルは高かったですか?
松村 他のをあまり経験していないのでわからないのですが、まぁそうですね。
-留学生活をしている中で、他の人たちの勉強の取り組み方と日本人の取り組み方で違う点はありますか?
松村 やっぱり日本人が一番真面目だと思いますね。
-ドイツの人なども真面目ではないですか?
松村 ドイツの人はわりと真面目ですが、イタリア人は全然…、自由です。
-イタリア人は松村さんよりお若いのですか?
松村 まだ上の方が多いですね。
-みんな卒業するまでに時間がかかっているのですかね?
松村 2~3年だと思いますけどね。
-生活費はどれくらいかかっていますか?
松村 家賃も含めて1000ユ-ロ/月で、なんとかおさめたいと思ってやっています。
-家賃はおいくらぐらいでしたっけ?
松村 670ユ-ロですね。
-残り330ユ-ロ。けっこう切り詰めていますね。
松村 そうですね。出ちゃうこともあるのですが。
-食事も外食すると高くなりますものね。
松村 そうですね。
-留学して良かったと思えたことはありますか?
松村 むこうの音楽をそのままできるのが一番大きいと思います。それと他のヨ-ロッパの国が近いので、行こうと思えばすぐに行けるし、そこはいいですね。
-ヨ-ロッパは他にどこに行きましたか?
松村 まだドイツにしか行っていないです。
-ドイツはどちらに?
松村 ワイマ-ルです。
-講習会ですか?
松村 学校で、1年に1回そこに行ってオケをふるというのがあって。
-カリキュラムで?
松村 そうです。
-ドイツのオケをふるのですか?
松村 そうです。
-何語で?
松村 英語ですけれど、なかなか大変です。
-イタリアに行っても英語の使用頻度は高いですか?
松村 いや、僕もそこまで英語をしゃべれないので(笑)。イタリアならイタリア語をしゃべります。
-指揮をやっていると語学も大事ですよね。がんばってください。
松村 はい(笑)。
-留学してみて自分が変わったなとか、成長したなと思う所はありますか?
松村 嫌々でも話に入っていかなければならないので、ハ-トは強くなったかなと思います。
-話に入っていかないと、どうなってしまうのですか?
松村 「具合悪いの?」と聞かれたり(笑)。
-黙っていたら具合が悪いと思われるのですね(笑)。積極性が身に付いたと?
松村 そうですね、多少は。
-イタリア人とつきあうのは大変ですか?
松村 けっこう大変ですね(笑)。
-どういった点で?
松村 あまり後先を考えないので、、、。
-無鉄砲な計画を立てるとか?
松村 ずっと飲んでるとかですね(笑)。
-イタリアは夜の生活が長いですよね。
松村 長いですね。いつまでも明るいので。
-おつきあいで飲みに行ってしまうと、全然帰れないと?
松村 そうですね。
-学校はあと何セメスタ-ですか?
松村 たぶんあと1年はいると思います。
-イタリアの学校の仕組みをちゃんと理解しきれていないのですが、日本のように何単位とらなければならないと決まっていないのですか?
松村 決まっていますよ。
-でもあと1年はいられると?
松村 まだ全然足りていないので、いなければならないというか。
-最初の頃は単位が取りづらかったのですか?
松村 ちょっとしんどかったですね。論文をイタリア語で書かなければならないので。
-何の論文ですか?
松村 作曲家についての分析とかです。
-卒業論文?
松村 そういう言い方はしないのですが、卒業までに一発書かなければいけません。
-何ペ-ジとか決まっているのですか?
松村 ペ-ジはそんなにないのですが、10~20くらいですかね。
-大変ですね。イタリア語で…。
松村 はい。
-これからそれに取り組むということですか?
松村 はい。
-大変そうですね。それは指導教官がいてディスカッションをしながら進めるのですか?
松村 そうです。
-それは指揮の先生?
松村 音楽学の先生とか、いろいろいますよ。
-今後イタリアに留学する人に向けて、アドバイスすることはありますか?
松村 イタリアに限らずですが、その国の言葉は最低限しゃべれる状態で行かないと、最初は厳しかったなと思います。
-どんな点で厳しかったですか?
松村 手続きをする際にもしゃべれないと相手にされないので。聞きたいことがあっても、よく伝わらないことが多かったです。
-どういう風に乗り越えたのですか?
松村 僕はたまたま長く住んでいる日本人の方が近くにいたので、その人たちにお願いして一緒にやってもらったりしたのですが。
-ではいろんな方に助けられて?
松村 そうですね。
-他には何かありますか?
松村 特に…、語学が一番大変だと思います。
-とにもかくにも語学と。語学は日本ではどれくらい勉強されたのですか?
松村 大学4年の途中くらいなんで、1年半くらいですかね。
-それまでは別の言語を?
松村 何もやっていないです。
-1年半くらいでよく試験の時に通れましたね。
松村 全然わからなかったですけどね(笑)。
-あれも、普通に免除で通っていたのは松村さんだけではなかったですか?
松村 そうでしたね。
-すごいと思いました。普通の文法とかですか?
松村 それとリスニングがありました。
-語学がわからないと大変ですよね。
イタリアで演奏会はされたりしていますか?
松村 学校の発表会などはありました。
-学年末とかで?
松村 いえ、先生が勝手に選抜した人でいろんな所に行ったりとか。
-演奏旅行ですか?
松村 旅行というほどの距離ではないのですが、バスで行ったり。
-お客さんも結構入りますか?
松村 そうですね、そこそこ。
-普通にチケットは売っているのですか?
松村 いえ、もちろんただです。一般に公開して、ただでやる演奏会です。
-教会などで?
松村 教会ではなく、そういうサ-ラみたいなものがあって。そこでの演奏会のような。
-わりと頻繁にやっているのですか?
松村 そうですね。でも生徒も多いので、そんなにしょっちゅうはやらないですけど。
-年に何回か?
松村 そうですね。
-では演奏の機会もけっこうあるのですね。
松村 そうですね、そこそこは。
-自分の技術力があがってきたぞ!という実感はありますか?
松村 技術力というか、リハ-サルをする上でイタリア語で話さなければならないので、少しずつその引き出しは増えてきたかなと感じます。
-イタリアのオケの人たちは言うことを聞いてくれるのですか?
松村 ききますよ、日本人より。
-そうなんですね!意外です。日本の方がききませんか?
松村 きかないです(笑)。
-今度のコンサ-トの準備は順調に進んでいますか?
松村 はい、ちょっとずつ(笑)。
-留学生活について、今の時点での感想はありますか?
松村 今の時点では自分では評価できないというか。後々役に立ったなと思うことはあるかもしれませんが、今の時点では思ったほど吸収できていないかなというのが、正直な所です。
-理想が高いのですね。
松村 どうなんでしょう(笑)。
-学校を卒業したらどう進みたいとか、どうなりたいとかはありますか?
松村 卒業したら…他の国にも行こうかなと思ったりはしています。
-ドイツとか?
松村 そうですね。
-別の国に留学した方なんですが、学校同士の交換留学でドイツに行っていました。そういうものはヴェルディにはありますか?
松村 ありますけど、そこまでイタリアに慣れていないので、今行ってもあんまり意味がないかなと。
-ゆくゆくは学校も出て、指揮者として世界で活躍できればと? それとも日本で?
松村 半々くらいですかね。
-どこか拠点があって、みたいな?
松村 そうですね。
-劇団の採用試験があったりもするのですか?
松村 あまりそういう形はありません。自分から行くのではなく、声がかかってどうこう……という。
-では演奏を聞いていただく機会があると、そこから声がかかってくると?
-今日はありがとうございました。それでは日本のコンサ-トも楽しみにしています。
■♪■【2015年コンサート情報】■♪■■♪■■♪■■♪■■♪■■♪■
オペラ「ラ・ボエーム」 OperaVera
2015/11/27 (金) 19:00 - 21:30
会場 葛飾シンフォニーヒルズ アイリスホール
チケット
前売り券 (一般) ¥4,000
前売り券 (学生) ¥3,500
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